医療の呼吸器用語『PAO2』を解説
医療と看護を知りたい
「PAO2」って何ですか?
医療の研究家
PAO2(肺胞気酸素分圧)は、肺胞内にある酸素の分圧を表す用語です。単位はTorrやmmHgで表されます。
医療と看護を知りたい
PAO2ってどうして使うんですか?
医療の研究家
PAO2は、肺胞内でのガス交換の状態を示すA-aDO2(肺胞気動脈血酸素分圧較差)を計算するために使用されます。この値は、低酸素血症の原因を特定するのに役立ちます。
PAO2とは。
-PAO2(肺胞気酸素分圧)-
肺胞気酸素分圧(PAO2)とは、肺胞内の酸素の分圧を表す値です。単位はTorr(トール)またはmmHg(ミリメートル水銀柱)です。日本では、体内の圧力にはTorr、血圧にはmmHgが慣習的に用いられています。
分圧とは、気体の持っている圧力のことであり、圧力の比率は濃度に置き換えることができます。例えば、1気圧の大気中の酸素の分圧は約160Torrです。大気圧(1気圧)は760Torrなので、酸素の濃度は160÷760≒0.21、つまり21%となります。一方、二酸化炭素は空気中にほとんど含まれていないため、分圧は0Torrです。
-PAO2の計算式-
PAO2は、以下の式で定義されます。
PAO2 = (大気圧(PB) – 飽和水蒸気圧) × 吸入酸素濃度(FiO2) – 動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)÷呼吸商
多くの場合、この式では大気圧=760Torr、飽和水蒸気圧=47Torr、呼吸商=0.8と仮定して計算されます。動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は動脈血液ガス分析で測定され、健常者では40Torrにほぼ一定なので、次のように定義できます。
PAO2 = (760 – 47) × FiO2 – 40÷0.8
この式では、FiO2は吸入酸素濃度を表しており、吸入酸素濃度が高いほどPAO2も高くなります。空気の場合、FiO2=0.21となり、上記の数式は次のようになります。
PAO2 = (760 – 47) × 0.21 – 40÷0.8 ≒ 100
そのため、1気圧の室内環境にいる健常者の多くは、PAO2が100Torr付近になります。
-PAO2の利用-
PAO2は、肺胞気動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)を計算する際に利用されます。A-aDO2は、肺胞のガス交換の状態を示しており、この値から低酸素血症の原因を鑑別できます。
A-aDO2 = PAO2 – 動脈血酸素分圧(PaO2)
PaO2は動脈内の酸素の分圧で、血液ガス分析で測定されます。A-aDO2は、肺胞に流れ込む酸素の分圧と肺胞内の実際の酸素の分圧の差を示しています。理想的な値は0ですが、実際は乖離があり、A-aDO2の正常値は5~15Torrです。
低酸素血症の患者では、A-aDO2の値が診断の参考になります。
* -A-aDO2<15Torr-:肺胞でのガス交換に問題がない可能性があります。この場合、二酸化炭素分圧(PaCO2)が高くなっているため、換気が少ないことによる肺胞での酸素不足が考えられます。
* -A-aDO2>20Torr-:肺胞でのガス交換に障害がある可能性があります。障害としては、拡散能の低下、シャント、換気・血流(VA/Q)不均衡などが考えられます。具体的には以下の通りです。
* -拡散能の低下-:肺炎などの肺胞の障害
* -シャント-:肺塞栓症などの血流の問題
* -換気・血流(VA/Q)不均衡-:肺血流の多い部分と換気の多い部分のバランスが悪い状態。特に重症な肺炎で顕著に見られます。
PAO2の定義(計算式)
PAO2の定義(計算式)
PAO2(動脈分圧酸素分圧)とは、血液中の酸素分圧のことです。肺胞気酸素分圧(PAO2)は、理想的な肺胞気と平衡している動脈血の酸素分圧です。その計算式は次のとおりです。
PAO2 =(気道平均気圧 – 水蒸気圧)× FiO2 – PaCO2/RQ
ここで、
* 気道平均気圧大気圧と肺胞内圧の平均値
* 水蒸気圧肺胞内の水蒸気による圧力
* FiO2吸気ガス中の酸素濃度
* PaCO2動脈血中の二酸化炭素分圧
* RQ呼吸商(二酸化炭素産生量/酸素消費量)
PAO2の使用法
PAO2の使用法
PAO2は、臨床上さまざまな場面で使用されています。呼吸器疾患の診断と重症度評価、治療効果のモニタリング、麻酔管理などです。たとえば、低酸素症の評価では、PAO2の正常値である80~100 mmHg未満が報告されると、低酸素状態の可能性があります。また、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)では、PAO2が60 mmHg未満が重症と判断される基準となっています。さらに、麻酔中は人工呼吸器でPAO2を一定範囲に保つことで、患者の酸素化を管理します。このように、PAO2は呼吸器管理において不可欠な指標として広く用いられているのです。
A-aDO2を計算する際に有用
A-aDO2の計算におけるPAO2の意義
医療の呼吸器用語であるPAO2(肺胞動脈酸素分圧)は、A-aDO2(肺胞-動脈酸素分圧較差)の計算において極めて重要な役割を果たします。A-aDO2は、肺でのガス交換効率を評価する指標で、肺胞内の酸素分圧と動脈内の酸素分圧の差を表します。PAO2は、肺胞内の酸素分圧を推定するために使用されます。PAO2の値が高いほど、肺での酸素取り込みが効率的であることを示します。一方、PAO2の値が低い場合は、肺疾患やその他の病態の存在を示唆する可能性があります。したがって、PAO2は、A-aDO2の計算を通じて、呼吸器系疾患の診断や評価に不可欠な指標です。
低酸素血症の患者の場合
低酸素血症の患者の場合、PAO2 の基準値は異なります。低酸素血症とは、血液中の酸素濃度が低下している状態です。この場合、PAO2 は通常よりも低く、50 mmHg 未満になります。これは、肺で酸素が適切に血液に取り込まれていないことを示しています。低酸素血症を引き起こす要因には、肺疾患、心臓疾患、貧血などがあります。低酸素血症の治療は、根本的な原因に対処することを目的としています。
A-aDO2<15 Torr
A-aDO2(動脈-肺胞気酸素分圧較差)とは、動脈血酸素分圧(PaO2)から肺胞酸素分圧(PAO2)を引いた値で、呼吸器疾患の重症度を評価する指標です。 通常、健康な人では10~15 Torr(1 Torrは1ミリメートル水銀柱の圧力)です。
A-aDO2が15 Torrを超える場合は、肺のガス交換障害が疑われます。 これは、肺胞から血液への酸素の移動が減少し、低酸素症を引き起こすことを示します。肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎などの呼吸器疾患で上昇することがあります。
A-aDO2の値が高い場合は、以下の対策が考慮されます。
* 酸素療法
* 気管支拡張薬
* 抗菌薬(感染症の場合は)
* 呼吸リハビリテーション
A-aDO2>20 Torr
の「A-aDO2>20 Torr」は、呼吸器系におけるガス交換の異常を示す値です。A-aDO2とは、肺胞動脈における酸素分圧(PaO2)と、動脈血における酸素分圧(PaO2)との差のことを指します。通常、この差(A-aDO2)は15 Torr未満とされています。しかし、A-aDO2が20 Torrを超える場合、肺機能の低下やガス交換異常が疑われます。